1 奴隷少年ジャンダリ

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 ギリシア人が少年を愛するのは普通だし、過密する都市において人口抑制策としても奨励(しょうれい)されていた。反対に、コム=エル=ディッカ地区や北東の街の外れでユダヤ人の人口が増えつづけているのは、他国での迫害から国際都市アレクサンドリアに逃れてきたこともあるが、ユダヤの宗教では『レビ記』で男色(なんしょく)を禁じており、また慣習的に嬰児(えいじ)遺棄(いき)堕胎(だたい)を禁じていることも要因と言われる。  とはいえ、ギリシアでは少年の太腿にこすりつけるところまでが常識であり、口や肛門に入れるのはマナー違反とされていた。ジャンダリは何度か主人に肛門に入れられたことはあるが、恐れているのは快楽に飲まれてしまうことだ。酒で酔ったり肛門の快楽で理性を失ってしまうことは恥ずかしいこととされている。ジャンダリのこれまで読んできた書物で、そういったギリシアの文化が彼の中に憧れも含めて(つちか)われていた。 「じっとしていろ、家具!」  主人は人が変わったようにジャンダリの尻をたたく。
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