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主人が切なそうな、祈るような声でつぶやく。彼の汗がジャンダリの背中にいくつも落ち、褐色の肌で小さい汗の玉が転がったかと思うと弾けて溶けた。
ジャンダリは息を止めて尻の筋肉に力を入れて防御しつつ、指だけを動かして自分の着ていた服を慎重にたぐり寄せようとする。
と、キトンの首を出す穴から、拳よりも大きな何かの塊がまろび出そうになり、ジャンダリはびくっと指を止めた。
「買ってもらう書物は何がいい? 弁論術の書か、人気の喜劇作品か、それとも……最近は美書法とかいう物好きなものに興味を持ってるようだな。いいぞ、何でも買ってやる……。いっくぞお。力を抜け、ジャンダリ!」
くふぅ、とジャンダリの食いしばった歯の間から息が吹き出る。
主人は目を閉じて下半身に意識を集中させている。ジャンダリはキトンの肩を通す部分に手を突っ込み、そこに隠れている何かに触れた。
主人が重心をゆっくりと前に傾けて母乳を吸う赤子のように無心の顔で、おおお……と声を漏らしたとき、
「あんた!」
という女主人の声が部屋に響いた。
主人がジャンダリに腰を押し当てたまま固まる。
「あんた!」
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