1 奴隷少年ジャンダリ

8/9
前へ
/116ページ
次へ
 さっきより声が大きくなる。  次の瞬間、主人はかがんでジャンダリの耳もとで服を着ろ! と小声で命じ、動作させるスイッチでも押すかのようにジャンダリの頭をはたいた。  いてっ、とジャンダリが振り向くと、主人は腰ひもの位置をくいくいと直しながら、もう部屋の出口に向かっている。 「おう! 準備できたか? そろそろ行こうか! 昨日の(もう)けを計算していたところだ。いま行く!」  主人とジャンダリの暮らす家は、アレクサンドリアのギリシア人地区の庶民(しょみん)の家だ。家の中心部に中庭(なかにわ)があり、ギリシアの神々に祈りをささげるための祭壇(さいだん)が置かれている。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加