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数千年間、王朝がいくども替わっても、エジプト神官の官僚組織だけは不滅――千百年ほど前、イクナートン〔アメンホテプ四世〕がアトン神を掲げて遷都し、アマルナ革命を起こしたときは神官団も焦ったが――しかしそれも瞬きする程度のこと。イクナートンの息子の少年王トゥトアンクアムン〔ツタンカーメン〕は神官団にとってはよちよち歩きの子羊だった。さて、今度のプトレマイオス朝は何百年もつのか……。砂地のくぼみの底で落ちてくるサソリを待ち受けるウスバカゲロウのように、エジプト神官団は悠然と儀式を繰り返していた。
ざわついているのは王宮前だけでなかった。
今朝は日の出前から街に人の声が聞こえ始めている。
アレクサンドリアには黄金から大理石、ワインが流れ込み、インドの商人から黒い肌のヌビア人兵士、ローマからきた最高級娼婦、アテナイのプラトーンの学園から招聘された学者やジャンダリのような戦争奴隷が世界中から集められ、いつも騒がしい街だが、今日は昼前から気が早い。
――何か起きそうな気がする。良いことか悪いことか?
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