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πρόλογος(プロローグ)
共通紀元前三世紀の終りちかく
プトレマイオス朝エジプトの王都アレクサンドリア。王立図書館の一隅にて
「アリストテレースの書を見失っただと!」
暗がりで老人が語気を強めた。
王立図書館の二階、アフリカに関する書物が納められた書庫。ここにはあまり他の研究者が来ない。
少しだけ間があった後、老人と向き合っている赤みがかった髪の中年男性が観念したように口を開いた。
ペリ、ポイエーティケース……とかすれた声を絞りだすと、ギリシア人の衣服である亜麻で織ったキトンの左肩部分を引っぱって額の汗をぬぐう。
「『詩学』の第二巻か! よりによって……。あれは校定作業中でまだパピエ・マシンに取り込んでいないのだぞ!」
老人が声を抑えることも忘れて赤毛の男に詰めよる。そして急に静かな、冷たい声に変えて言う。
「いつからだ?」
――点検記録をさかのぼって調べたところ、この九日間のどこかです。
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