πρόλογος(プロローグ)

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「一週間〔古代エジプトでは一週間は十日間〕近くも気づかないとはなんということだ……。明日の昼までに見つけろ! (ファラオ)に知られる前に見つけるのだ。分かるな? このまま見失ったとしたら、図書館長である私だけでなく、プトレマイオス朝の威信(いしん)をかけた『アリストテレース全集』刊行計画のプロジェクト・マネージャーである司書(ししょ)室長(しつちょう)、おまえの責任だ」  はい、と頭を下げ、赤毛の男は書架(しょか)の暗がりから出た。細かな(ほこり)が窓から()しこむ光に浮かび、そこだけ時間が止まっているかのようだ。  館長の責任だけでなく、と言うが、自分だけの責任にされるのだろう。  アレクサンドリア図書館の館長は代々プトレマイオス王朝の王子の家庭教師もこなす。それはアテナイの大学者アリストテレースがマケドニアで王子時代のアレクサンドロス大王の家庭教師だったことにちなむ。
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