πρόλογος(プロローグ)

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 アレクサンドロス大王が今からおよそ百年前にバビロンで急死してから、後継者(ディアドコイ)争いはそれぞれの地域を()いだ者たちの間で熾烈(しれつ)に続いている。自分たちがいかに大王の正統な後継かを民衆に示すのは、各王朝の生き残りをかけた戦略でもある。  エジプトのプトレマイオス朝に移植された、やがて大王(メガス)となる少年と万物を知る学者の師弟関係をまねた教育システム。アレクサンドリア図書館の館長に求められるものは世界最高の学者であることだけでない。それは高度に政治的、象徴的な職なのだ。  明日はたしか昼過ぎに館長が宮廷に参内(さんだい)する日だ。それまでにアリストテレースの書が見つからなかったら自分は消されるだろう。この王立図書館の実質的な立ち上げ責任者であったファレロンのデメトリオスでさえ、一世の跡継ぎとして別の王子を推薦していたために即位後に二世姉弟愛王(ピラデルポス)から恨まれ、メンフィス近くまで落ち延びたすえにコブラに「()まれて」死んだ。
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