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どこから探せばいいのか……。足がふらつき、書架スペースの出入り口のひんやりした玄武岩の枠に手をつく。巨大な二階建ての図書館を支える二重周柱の陰の向こうに、白い陽の光が斜めにふりそそいでいる。
「待て」
呼び止められ、赤毛の男は荒れた呼吸を抑えようと努めながら振り返った。パピルスの巻物がぎっしり詰まった書架の奥に、羊毛のように膨らんだ白髪と髭に囲まれた老人の顔が暗がりに浮かんでいる。
「昨日、珍しい外国の客人が来館していたな」
……誰のことだ? 王立図書館には毎日のように諸外国から知識人や旅行者が訪れる。無理やり連れてこられると言ってもいい。もしその旅行者が、アレクサンドリアに一冊でも書物を持っていたなら……。
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