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その書物愛のせいで、王朝があがめる万学の祖アリストテレースの講義録や対話編、入門書は値段が高騰し、一儲けを企んだ不届きものによる偽書作りが横行し、ここ王立図書館の文献学者を悩ませていた。
自分の持つあやしげな書を高く買い取らせようとするもの、アレクサンドリアに寄っただけで書物を没収されたもののクレーム、貴重な書物を盗もうと布袋を肌に巻いて隠して入館しようとするもの、などがここ王立図書館にひっきりなしに訪れ、図書館員を疲弊させていた。
本来の利用者である当世一流の学者たちや上流階級の子弟である学生たちも、朝廷の発行する入館証と秘密の暗号を言えなければ入館できなくしている。
西はニカイア から学問の本場アテナイやエペソス 、イェルサレム、ペルシア、ペルガモン、バビロン、果てはアレクサンドロス大王が到達したインドからも、書物の持つ奇妙な力にもてあそばれて……あるいは金欲しさゆえに、あらゆる国や都市からの旅行者が王立図書館に訪れる。
もはやいまさら珍しい訪問客など――
……いた。インドではない、もっと北の草原を通ってはるか東方から来たという少女――。
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