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葉はペットボトルの水を緑色の生き物にかけはじめる。
やっぱり、その生き物は河童……だよね?
「潤うっぺ。幸せだっぺ」
緑色の生き物は気持ちよさそうにニコニコしながらユラユラと揺れている。
緑色の生き物は語尾に「ぺ」というのが口癖らしい。
彩は緊張が解け、怖かったのと面白さとで泣きながらクスクスと笑いだす。
「人間、やっぱりおいらが見えるんだっぺ。怖くないっぺ?」と緑色の生き物が彩に話しかけるが、彩の笑いが止まらない。
「河童がそんなに面白い? まあ変な生き物だもんね」
葉は微笑みながら河童のホッペをツンツンとする。
「おいら、変な生き物じゃないっぺ」と河童は葉をポカポカと叩く。
「あ、ごめんなさい。変じゃないよ。でもね、怖かったのとその……っぺっていうのが可愛くて、つい。やっぱり河童さんなのね」と彩はクスクスと笑う。
「おいら、可愛いっぺ。嬉しいっぺ」
河童はニコニコしながらスキップをする。
「ええ、可愛くねえよ。ばっちぃしよ」
金平糖は目を細めて睨みつけながら、尻尾でバタンバタンと大きな音を立てる。
「可愛いけど、可愛くないし。オレの網……壊したし」
白いヘッドホンをつけている双子の片方が半べそをかいている。
「絵、だからいったじゃん? 自業自得だろ? 泣くとかカッコ悪いじゃん」
黒いヘッドホンをした双子の片方が白ヘッドホンの少年の頭をポンポンと叩く。
「おい、ポンコツ。紛らわしいから元の姿に戻れよ」
金平糖はイライラして尻尾を大きく振っている。
「ああ、わかったじゃん」
黒いヘッドホンをした少年が二十歳くらいの青年の姿に変化する。
「お嬢さん、お怪我はありませんでしたか?」
青年は微笑みながら彩の手を取り優しく握る。
彩は突然の出来事に驚き目をパチクリと瞬きをする。
「あれ? 好みではないと? 大人すぎたかな? じゃあ……」
青年は少し考え、また別の者に変化しようとすると金平糖の尻尾でベシっと叩かれる。
「ポンコツ、お嬢ちゃんが困っているだろ。獣の姿に戻れ」
「師匠……わかったじゃん」
青年は本来の姿、狸に変化する。
「おねえさん、大丈夫だっぺ?」と心配そうに彩をみるメロンソーダ。
「え? あ、うん。大丈夫だよ」
「よかったっぺ」
メロンソーダは嬉しそうにピョンピョンとジャンプする。
「ほんと、可愛いね」
彩はメロンソーダの可愛さに心を奪われ、メロンソーダの頭を優しく撫でる。
「可愛いっぺ? 可愛いっぺ?」
メロンソーダは頬をピンク色に染め、嬉しそうに手足をピンっと伸ばしきる。
「だからさ、可愛くねえって」
金平糖は不機嫌そうに尻尾を縦にバシンバシンと音と立てて振る。
「あら、可愛いわよ」とフワフワと飛んでいた蝶が人型のリンの姿に変化し、メロンソーダの頭を撫でる。
「可愛いっぺ、可愛いっぺ」とメロンソーダはクルクルとダンスをする。
「こいつがここまで嬉しそうなのは初めてだな」
金平糖は腕を組み、半目で河童を見つめている。
「あ~確かにね。いつも悪戯するから怒られてビクビクしているものね。メロンクリームソーダくんは可愛い、可愛いよ」と葉は微笑む。
ん? クリームが追加された? 適当に名前がつけられているのかな? 感覚なのかな? まあ、どちらにしろ可愛いからいいかな。
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