113人が本棚に入れています
本棚に追加
第二話 異類異形
目の前には……。
電車の天井までの高さがある黒い妖モノが立っている。
目や口がないのに笑っているように感じる。
手は地面につく長さで足というものが見当たらない。
どうやって歩く? 動くのだろう。
そんなことより、どうすればいい?
目を閉じ見えないふりをすればいい?
それとも別の車両へ逃げればいい?
どの選択が正しい?
いつもなら逃げる選択肢があるけれど、動いている電車の中では逃げられない。
じゃあどうしたらいい。
そもそも光を感じたのは何だったんだろう。
黒い妖モノは曇った手鏡をこちらに向け、クルクルと回し始める。
黒い妖モノには鏡は天敵ではないの?
ま、眩しい。
彩は眩しくて目を逸らしてしまう。
それに気が付いた黒い妖モノは人の影のような姿となり、大きな口を開け、ドタドタドタと大きな音を立て四つん這いで走ってくる。
え? どうしたらいいの?
「そいつから目を逸らさないで」
どこからか声がするが姿は見えない。
目を逸らすなって言われてもこのままじゃ……。
電車はトンネルから抜け、バンっと窓が開いた音がしたかと思うと、目が開けられないほどの眩しい光に包まれる。
「命消滅!」
最初のコメントを投稿しよう!