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第五話 吐故納新
次の日の朝。
目覚まし時計は鶏のコケコッコーという声。
窓の外はまだ少し暗い夜明け前。
小雨が降り、少し霞がかっている。
さて、もうひと眠りしようかな。
彩は目を閉じ、ゆっくりと眠りについて行く。
カリカリカリ。キー。ドンっ。……ゴクン。
ん? 何の音だろう? まあ、いっか。もうひと眠り……。
二度寝をし、起きると朝ごはんが用意され、祖父母と一緒に食べる朝食。
これが世間でいう家族団欒ってやつなのね。
はじめましてでどうすればいのかわからない。
私の得意技、ニコニコ顔で過ごすことにする。
今日は転校初日。
長い前髪は切って、長い後ろ髪は結ってイメチェン完了!
真新しい制服は新品の独特の匂いがし、着心地は固いというか私の心のように緊張している感じ。今日からよろしく、新しい制服さん。なんて。
家を出ようとすると祖父母に「いってらっしゃい」と声を掛けられる。
こういう時は……「いってきます」彩から自然な笑顔がこぼれる。
空を見上げると一つの大きな入道雲。青空を独り占めして、お昼寝をしているかのような大きな雲が広がっていた。空が明るく感じるのも、空を見上げる余裕ができたことも少し嬉しい。
都会にはなぜあんなにも足元に黒いものが蠢いていたのだろう。ここに来てから妖モノを見る機会も減り、都会でよく見かけた蠢くモヤモヤしたものも感じなくなった。昨日会った人たちの話だとここら辺は妖モノが多いような感じだった気がするけど……まあ見えない方が気が楽だし、気にしないでおこう。
それにしても学校までは少し……いやかなり遠い。まさかバスが一時間に一本だなんて思はないし……。転校初日だし遅刻しないように急がないと。
彩は少し早歩きで学校へと向かう。
ふと前を見ると、人けのない雑木林に向かって大きな網を構える小学生くらいの双子が何かを捕まえようとしているのが見える。青髪の双子の少年たちは片方が白いヘッドホン、もう片方が黒いヘッドホンをしている。
彩はその少年たちが少し気になり雑木林の方をチラリと覗く。
ヒュっと一瞬、突風が通り過ぎて行く。
突風が通り過ぎる瞬間に双子は何かを捕まえようと網を大きく振る。
「げ、網が破れたし」
「だから、違う作戦にしようっていったじゃん」
双子が持つ網はいつの間にか破れている。
え? 何が起こったの?
彩が呆然としていると林の中から、緑髪で天色の瞳をした高校生くらいの男の子が雑木林から飛び出してくる。
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