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――なぜ、わたしがお見舞いに来ているのか?
それは……ちょっとした義理を立てているからだ。
「なあ、チビ助」
また言った。
わたしはいつもの調子で怒ろうとしたけど、ふといつもと違う声色だった。
胸の中がすーっと冷たくなる感覚。
「……どうしたの?」
「……おれ、詩歩に言わないといけないことがあるんだ」
康平くんの表情は伏し目がちで唇を何度か舐めていた。
病室の窓から差し込む陽射しは穏やかで、冬に関わらず春を思い出す。
康平くんとわたしだけの病室。
ここだけが時が違うのかと思った。
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