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だが、ボロになった箒を着払いで男に送り返した夜に、弟から電話がかかってきた。
母が自宅の階段から落ちたらしい。
「頭を打ったから検査したけど、異常なし。ただ、落ちたときに足を捻挫して生活が不便らしい。姉ちゃん、良ければ近々顔出してやって」
弟の話を聞きながら、不謹慎にも箒の効果を疑った。
あの箒、親子には効かないのかな。
ひょっとして、ストーカーや先輩との縁が切れたのはただの偶然だった……?
僅かな疑念を胸に残したまま、私は週末に母の様子を見るためにアポなしで実家を訪れた。
正確には、帰省の連絡をしたのに、母から返信がなかったのだ。
突然帰ってきたら、また小言を言われるだろうな。
自嘲しつつ、実家のインターホンを押す。
「はい、どちら様ですか」
インターホン越しに聞こえてきた母の声は、何故か少しよそよそしかった。
「私だよ。お母さんケガしたて聞いたから様子見に来た。大丈夫?」
「あの、どちら様?」
おかしな母の反応に、少しイラつく。
「何言ってるの。私だよ。お母さんの娘」
「うちには息子しかいませんが……」
ふざけている様子はない。本気で怪しむような母の声に、全身の血が下がった。
そういえば母は、階段から落ちたときに頭を打ったんだっけ。
もしかしてそれで……
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