「番になるということ」

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「あぁ…。噛み跡になってる…。なんならちょっと血も出てる。ごめんね、痛かったよね?」 全て綺麗に整えた後、桂人のうなじに絆創膏を貼りながら申し訳なさげに言う僕に、桂人は笑った。 「…嬉しかったから、大丈夫。」 声が戻っても、桂人は元々控えめで言葉少ならしい。 あの頃の心地よい物静かな雰囲気はそのままだった。 「あぁー、可愛い!!」 もう何か色々と急激に堪らなくなって桂人を抱き締めた僕を、桂人は少し困ったように笑って、抱き締め返してくれた。 「僕気を付けることなんてすっかり吹っ飛んじゃってて中にも出しちゃったし…。」 「それも…、」 言いかけて桂人は少しだけ照れたように顔を赤くして視線を反らした。 「…嬉しかった…。…いつも中に欲しいな、って思ったりしてたから…。」 「ごめん桂人、可愛いすぎるのももうその辺で…」 この可愛さは殺人級だ。 桂人が声を出せないときも、メモのやりとりで気持ちを伝えることはあまりなかった気がする。 その表情や態度で十分伝わっていると思っていたし、無理に聞き出すようなことはしたくなかったからだ。 言葉なんてそんなに重要なことではないと今までの桂人との時間で十二分に感じていたはずなのに、いざ桂人にこうして気持ちを言葉に乗せられると、どうしようもない愛しさが溢れる。 「梗太朗、さん…。」 顔を赤くする僕に、桂人がもう一度身を擦り寄せ、唇を近付ける。 僕もそんな桂人の身体を抱き寄せ、応えようとしたその時。 ―きゅるきゅるきゅる… この時間に最もそぐわない音が鳴り響いた。 「…。」 「…。」 「…、ぷ…っ」 思わず顔を見合せ、それから互いに吹き出してしまった。 「…そういえば、晩御飯まだだったね…。」 僕が帰宅してから、有に二時間は経過していた。 あんなに激しく抱き合った後だし、気づけば急激に空腹感を感じる。 「ごめんなさい、僕、急に激しいヒートが来てしまって何も準備出来てなくて…。」 申し訳なさそうにする桂人の頬に唇で触れる。 「そんなの、桂人が謝ることじゃないよ。なんか有り合わせのご飯、一緒に作ろう?」 一緒に、なんて言えるほど料理のスキルはないけど…、と付け足す僕に、もう一度桂人が笑ってくれた。
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