彼とのこと。

30/32
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「そ、そんなの無責任じゃ……」 「ですね、そう思います、我ながら。でもそれまででもいいから、一緒にいてほしいんです」 「そんなの……」 「若村さん、好きです」  ふわっと制汗剤みたいな、爽やかな香りが濃くなって、唇に熱いものが触れる。  柔らかくはまれて、背中に冬真くんの腕の力強さを感じた。  本当に無責任で、先の見えない告白。  結婚を意識せねばならない年の女に、なかなか酷な提案だ。  フリーの状態じゃなきゃ、結婚相手なんて探しようがないし、新しい男だって作れない。  ずるい。そんな、未来のない関係でいいだなんて、ずるい。  だけど。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!