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ある春の夜
サングリアから始まり、スパークリングワインの赤、白、店のオリジナルというカクテルやハイボール、木嶋の入れた赤ワインのボトル。
横浜駅そばのイタリアンバルと冠した居酒屋で、今夜もしこたま飲んだ。
大学を卒業後に入社した広告代理店の同期で、もう七年の付き合いになる木嶋ともつれ合いながら店を出て雑居ビルの階段をくだる。
二足のハイヒールが鳴らす不揃いなリズムが、どれだけ私たちの足取りがおぼつかないかを物語っていた。
木嶋のトレンチコートの肩に腕をまわすと、彼女は愉快そうに空を仰ぐ。
開かれたガラス扉から吹き込んできた温い春の夜風がアルコールと煙草のにおいをふわりと浮き上がらせた。
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