彼とのこと。

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 そう言うと冬真くんは急に真面目な顔になって、私の心を掴もうとするように、じっと私の目を覗き込む。 「若村さんの下の名前も、連絡先も、何が好きで何が嫌いか、どんな子供だったのか、どんな場所に旅行したことがあるのか、どんな店によく行くのか、どんな男が好きなのか」  ふっくらとした涙袋の上の、色素の薄い瞳から目が逸らせない。  彼の空気に飲まれて、惹きつけられて、逃げられなくなる。 「先のことは正直、分からないです。もしどうしても早く結婚したいと思ったり、そういう相手ができたら、そっちに行ってくれても構いません」
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