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「今回の受賞作を制作する上で、一番苦労したところはどこですか?」
『世界観、と言いたいところですが、これは妻が作ったものを無断で拝借しました。脇役のキャラクターは人気漫画からの寄せ集めです。主人公が異世界で送る夢のような生活は、常に脳内にあった願望をリアルに描写しただけですしね』
「おいちょっとこれ、大丈夫か? 暴走してんじゃねぇのか?」
どこか得意げに話すモザイク声に、千里が眉をひそめる。テレビの生放送なら慌ててCMに切り替えるところだろうが、予定されたインタビューはあと一問だ。成り行きを見守ろうと思い、服部は開きかけた唇を無言で結んだ。
「これからの抱負をお願いします」
新川がそう促すと、お面の受賞者は不気味な高音で、ゆっくりと話した。
『この度の受賞作は、天野ジャックの遺作となります。天野は今後復活の泉のない異世界から、皆様のご活躍を見せていただくことになるかと思います』
(まさか……)
全身にぞわりと鳥肌が立った。逸る鼓動を感じながら、新川に指示を出す。司会者は穏やかな笑顔で、それを復唱した。
「天野先生、そろそろお面をお取りいただけませんか?」
その言葉で、天野ジャックはカンパンマンのお面に細い指をかけた。その爪には、淡い桃色のマニキュア。五十代男性の手には、見えない。
千人の出席者と共に、服部は固唾を飲んで画面を見つめた。
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