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オンライン授賞式
「皆様、本日は第十七回光栄社スパーク小説新人賞授賞式にお集まりいただき、誠にありがとうございます」
出版社内の小さなスタジオに一人ぽつんと座る声優は、口元に笑みを浮かべて台本を読み上げた。
「本日の司会は私、新川慎が務めさせていただきます。よろしくお願いいたします」
耳ざわりの良い中音ボイスがマイクに吸い込まれ、インターネット回線を通して日本各地の出席者に届く。
「時節柄、諸般の事情により弊社初のオンライン授賞式となりました。皆様と直接お会いできないのは残念ではございますが、たくさんのお申し込みをいただき、全国から千人以上の方にご出席いただく盛況な式になりましたことを御礼申し上げます」
(始まった……)
服部は担当を任された授賞式が無事に滑り出したことに、安堵の息を吐いた。
ガラスの向こうで滑らかに話す新川が、目の前のモニターに映っている。服部のPCはオンライン授賞式の主催者に設定してあり、ここに映る画面が全員に共有される仕組みだ。出席者は常時消音、コメントの書き込みは不可にしており、服部が必要に応じて画面と音声を切り替えることになっている。
「服部さぁ」
隣に座る先輩編集者の千里が、腕組みをして質問を投げかけた。
「なんで司会、新川にしたの? 女性の方が柔らかい印象で良かったんじゃねえ?」
「彼は一昨年、スパーク受賞作のOVA化で主演を務めています。MCにも定評がありますし、今日の出席者は実際、半分以上が彼のファンだと思いますよ」
「へぇ」
「それに今回、大賞受賞作があれですから。女性声優にはオファーしづらかったですね、正直」
「あぁ、なるほど」
千里は皮肉な笑みを浮かべて椅子の背にもたれた。百キロはあろうかという巨体を預けられ、椅子はミシミシと悲鳴を上げている。
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