オンライン面会

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「星乃先生との面会、終わったぜ」  広報部を訪れた千里にそう報告され、服部は笑みを浮かべた。 「ありがとうございます。星乃さんお元気でしたか?」 「画面越しだけどさ、すっきりした顔してたよ。お前によろしくってさ」 「そうですか」  殺人罪の被告人として収監されている星乃まいに申し入れた面会は、奇しくもオンラインという形で実現したらしい。 「服部さぁ、ぶっちゃけ星乃先生とどういう関係なんだよ? お前の名前言ったら、あの人すげぇびっくりしてたんだけど」  (いぶか)しげな表情で問われ、服部は苦笑した。 「お互い顔は知らなかったんですよ。メールで何度かやりとりしただけで」  服部は、授賞式の前から天野ジャックと星乃まいを知っていた。前者はネット中傷の常習犯として。後者はその被害者の一人として。なぜなら、天野に攻撃された複数の書き手からの被害報告に対応していたのが、当時投稿サイトで働いていた服部だっからだ。  アカウントを凍結しても作り直して同じ行為を繰り返す天野に、IPアドレスから個人を特定し法的措置を検討していると通告すると、悪質な中傷はピタリと止んだ。しかしその時点で既に、質の良い小説を書く作者が何人も筆を折ってしまっていた。その一人である星乃まいの登録データを確認した服部は、彼女が加害者の家族、おそらく妻であろうことを知ったのだ。  トラブル対応に疲れた服部が転職した矢先、転職先の新人賞を受賞したのが天野ジャックだった。その授賞式の担当に指名されたときにはやるせ無さに身をよじったが、メールで話していたときには冷静だった星乃が、あんな復讐劇を計画していたとは夢にも思わなかった。
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