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ホームで転んだ人
ある日、都内の電車のホームで一人の青年がつまずきました。ここまではよくある話。
ところが、全く同じタイミングで、青年の近くでもう一人転んだ人がいました。同時に転んだ二人は、手をついた拍子に肩同士がポンと当たりました。何という運命でしょう。
しかし、そこに恋が芽生えることはありませんでした。
「何なのよッ」
青年が顔を上げた時、相手の中年女性はそう吐き捨ててすぐに行ってしまいました。一方の青年はすぐには起き上がりませんでした。
(このシチュエーション、小説に使えそうだぞ)
家に帰ると青年は早速、ホームで同時に転んだところから始まる恋愛小説を書き始めました。青年の筆力があったのでしょう、ネット上で公開した作品は人気となり、ついに出版されることになりました。
後日、その小説を知った例の女性は、自分も似たような体験をしたのだと得意げに言い触らしました。
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