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【 山登りのプレゼント 】
あの山は、見上げるとすごく高かった
僕はそんな山に尻込みをしていたんだ
でも、誰かがやさしく僕の腰にそっと手をあて、押してくれた
だから、僕は歩き始めたんだ
その山は、最初は緩やかな道だった
周りには、綺麗なお花も咲いている
川を超え、ゴツゴツした岩を登り、ふと上を見上げた
頂上にはまだまだ遠い
夜になり、辺りは暗くなった
でも、僕はライトを点けて、休まず登った
時に寒さに震えることもある
時に帰りたくなったこともある
でも、僕は休みなく登り続けたんだ
この山の頂上を目指して
やがて、夜が明け足元が見えてきた
見上げると、霧の向こうに、頂上が見える
あと少し、僕は力の限り、登って行く
諦めて立ち止まっても良かったのに
諦めて引き返しても良かったのに
最後の力を振り絞り、僕は登って行く
そんなことを繰り返していたら、ここまで登っているのに気付いたんだ
あともう少し、もう少しで頂上だ
辺りは、見える景色が違っていた
朝日が昇り、やがて僕は辿り着く
ぐるりと見渡すと、そこは今まで見たこともない場所だった
「キミならできる……」
風に乗って、そうどこからか聞こえてきたような気がした……
僕はふと足元を見たんだ
気付くと、僕の登山靴は、ボロボロになっていた
END
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