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「嘘をついていたのは、ごめん。ずっと心苦しかったけど……」  どこに顔を出してもまずは家名に群がられて辟易した。 そして書道家という肩書きにも。  そう言って彼は目を伏せる。  でも、だってそれはすごいことじゃないですか、と言ったら。  中身がどんな人間かも知らずにただ騒ぎ立てられるのは我慢ならない、と即答された。 「だから正体を伏せた。身代わりを頼んだ川口には予想通り人が群がって……。終始不機嫌だったけどね彼」  それでいつもあんな怒った表情だったんだ。  申し訳なさそうに笑う先生に、ついつられてしまう。
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