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「ひぇ ……」
ホワイトボードにがっつりと写され並べられた見たことも無いような漢字の羅列に、ただでさえ漢字に弱い俺の口からは、溜息と共にか細い悲鳴が零れた。
ペンを握る手に汗かくわ。何て読むのせんせえ ……
読み仮名を表示するのも億劫になってしまう。
そろりと周りを窺がってみると、俺と同じように若干引き気味の表情をしてる奴もいれば、平然と数式でも写すかのようにキーを叩く奴もいて、反応はさまざまのようだ。
普通の高校1年生がおよそ見ることのないそれらの漢字の群れは、黒板の一番右端のタイトルによると、『大乗仏教における仏』なのだそうだ。つまり、神様のリストということだ。
……… 普通科でさえこうなのか…
仏教系女子高へ入学したらしい遠い親戚の姉ちゃんの話を聞いてある程度心構えをしてきたものの、実際目の前にするとやっぱりどきどきしてしまう。
ましてやここ、別に仏教だけじゃないんだろうしな。
まだまだホワイトボードに並べられそうな漢字から避けるように、俺は窓際席の特権を活かして外の景色を眺めた。
向かい側にはもう一つ校舎がある。
あちらは通称『神様クラス』。別に校舎の造りが豪勢だとかそんなんではない。。少し……いや、かなり特殊な生徒たちを扱っているんだと聞く。
あそこには、俺より2つ上の従兄もいる。
……… 最近、その従兄は俺のことを徹底的に避けやがるのだ。
もともと家が近所であるので、以前は頻繁にお互いの家に上がり込んでたし、そのまま飯食って泊まったりするほど仲が良かったのに、あっちが高校へ入学したときから、突然無視され出したのだ。
叔母さんたちもなんとなくよそよそしくて、いつしか俺は従兄の家に近寄らなくなってた。
「──── 佐藤 尋!」
「うわっはい!」
サボっていたのがバレたらしい。厳しい声で先生に名前を呼ばれ、俺は慌てて返事をした。
隣の席の女の子が、可笑しそうに俺を見て笑ったので、恥ずかしくてテキストで顔を隠した。
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