1/500のメッセージ

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1/500のメッセージ

「ただいま!」  元気よく言った奏美(かなみ)は靴箱の上に置いてあったレターパックをむんずと掴み、通学鞄を豪快に振りながら二階の自室に上がった。  届いたと母から連絡をもらった瞬間から、中身を確認したくてたまらなかった郵便だ。  鞄を床に放り出し、レターパックの封を破る。 (やった……!)  中身は一冊の文庫本だ。最近ファンになった小説家、月乃(つきの)美羅(みら)の公式SNSのフォロワー数突破記念のキャンペーンに応募して当選したプレゼント。手持ちの本を送るとサインとメッセージを入れて返してもらえるというものだ。  高一の夏から今の高二の四月までと奏美はファン歴が浅く、作品もまだ五冊しか読めてない。  でも調べてみて、この作家は幅広い人気にかかわらずデビューから八年、出した三十四作でサイン本を配ったことはなく、このキャンペーンは異例の発表だったのを知った。  その貴重なサイン本をもらえるのはたった五百人。当選条件は作品の感想を書くことだった。  選ばれたファンへの作家からの贈り物だ。 (何て書いてくれたのかな。読んでくれてありがとうとか、応援とか?)  優越感と興奮に震えながら表紙を開き、扉を見る。  そこにあったのは綺麗な筆記体のサインと、黒のボールペンで小さく書かれた文字だった。  親 1/500
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