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イワシのオイル漬けではせっかくのブドウの香りが
オリーブに混じってしまう
かといって日頃齧っているアーモンドでは
どうにも素っ気ない
確かソーセージが棚の奥にあったはずだと思ったが
それは既にネズミの胃袋の中にある事を
爺さんは気付いていなかった
「うーん、困ったなぁ」
そう言って鼻の頭をポリポリと掻いた時
ひとつのアイデアが浮かんだ
それはまるで名案のように思え、
やがて他にはないほどの素晴らしい思いつきだ
と思った
そうして爺さんはまな板の上に人差し指を置くと
第一関節に合わせてナイフを振るった
とん、っと軽快な音を立てて
ナイフとまな板がぶつかる音がして
爺さんの指先は血の一つも流さずに
まるで人形の指のように転がった
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