alcoholic series No.2 ~ワイン~

5/8
前へ
/8ページ
次へ
爺さんは それを外側から一枚一枚剥がして、皿に丁寧に並べていった 指はめくるごとに色が瑞々しく、爽やかになっていた 順に並べてみると、色彩のテストのような グラデーションがそこに出来上がっていった そこに酸っぱいものや苦いもの そして甘いものや嬉しいものがあると気が付いた 爺さんはワインをグラスに注ぐと 浅く香りを確かめ、くるりとグラスを二、三度揺すり もう一度深く、その香りを吸い込んだ 髭に香りが染み込むほどに口を近づけて ゆっくりとその年月を確かめるように 自分と同じ年のそのワインを嗅ぎしめてから 一口、くっとワインを口に流した 飴を舐めるようにゆっくりとワインを口の中で動かすと 鼻から息を吸い、吐いて 飲み込んだ
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加