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そして一つ、鼻から溜息のような音を吹くと
アルゼンチンに嫁いでいった娘の顔を思い出しながら
皿に並べた指のうち、一枚をつまみあげて
舌の上に乗せるようにして口に入れた
また、初めて自分で育てたブドウの
味の悪さを笑いながら
噛み潰すように一枚を口にした
そうして彼は指を一枚一枚食べては
ワインを味わった
いつにもまして造形の深いワインの味わいだった
そして最後に残った指の一枚
最も色の濃い、一番外側の皮を噛むと
今年のワインと同じ味がして
噛み応えの十分だったその指を食べてしまうと
ワインは残り一杯分というところだった
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