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01 空にいちばん近い場所
学校の中で一番空が近い場所に行ってみたかった。
はじまりは、ただそれだけだった。
小さな頃から空に手を伸ばしてみては触れられないものか。と思っていたのも相まって、ただ空の存在だけが僕が呼吸をするのを許してくれるような気がしている。
空は大きくて、見ているだけで自分の抱えているものが小さく見えるから好きだ、みたいなそれらしい理由はいらなかった。
ただ空は見ているだけで呼吸をするが楽になる。それだけを信じていたい。
思えば、高校で写真部に入ったのも「写真部に入ると屋上に行けるらしいよ」そんな他愛のない噂を信じたせいだ。
そんな理由で部に入ってから、気が付けば二年の月日が経とうとしていた。
始めた頃はカメラを持っている自分に想像がつかなかったが、今ではフィルムカメラの『写ルンです』を首から提げていないと落ち着かなくなってしまった。なんてのは、言い過ぎかもしれないけれど。
今日も僕はカメラを首に提げたまま、お弁当を片手に立入禁止と書かれた紙が貼られているだけの屋上へと向かった。
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