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かわりにスラックスのポケットから取り出したスマートフォンに僕の言葉を打ち込む。
そんな僕を不思議そうに見つめていた彼女の視線に耐えかねて、一旦顔を上げると、広い二重幅の下に覗く大きな瞳と目が合ってしまった。
色素が薄いのか、透明に近い淡いブラウンの瞳が小さく揺れている。牛乳と氷をこれでもかといれたミルクティーの上澄み、みたいな色。
見つめ続けていると自分の奥に隠していたものが絡めとられてしまいそうな恐怖感をおぼえて、思わず逸してしまった瞳。
逸らした先にあった彼女の上履きに引かれた青色のラインが見える。僕と同じ色をしていた。交友関係が広くないから見覚えはなかったけれど、きっと彼女は同学年なのだろう。
『あんたはどうやって屋上に入ったんだ?』
ようやく文字を打ち込み終わった画面を彼女に見せると
「へぇ、気になる?」
なんてもう一度、細められた瞳に、なんだか悪いことを聞いてしまったかのような居心地の悪さを感じた。
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