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「だが、美里が家に帰ると、母親に亜利沙は一緒ではないの?と聞かれた。それから、亜利沙の行方は分からなくなり現在に至る」
亜利沙は、行方不明で警察に届け出が出されたが、大規模な捜索は行われなかった。引っ越しして来たばかりの戸隠家だったので、近所の協力が得られず、かつ同居した両親が孫の面倒を見ていただけなのに責めるのかと激怒していたので、穏便に済ませようとしたようだ。更に、亜利沙自身がよく迷子になっていて、度々、騒ぎを起こしていた経緯もある。
「何故、今になって探そうとしている?」
「それは、都市伝説だな……」
最近、かつて亜利沙が向かった公園で、子供が消える事件が発生した。それは、子供が木の虚で眠ってしまっていただけであったが、そこで遊んでいる女の子に声を掛けられると、悪魔に連れ去られると噂になった。
「動画も多数UPされていて、それが都市伝説になっていった」
美里は、忘れたかった妹の失踪を思い出し、更に、無遠慮な人々に事情を聞かれるようになった。
「まあ、都市伝説の元ネタが、亜利沙だと気付かれ始めたわけだ……」
美里は、何故、妹と一緒に公園に行かなかったのかなどと、同僚にも事情を聞かれ、精神的にまいってきたらしい。
「都市伝説ですか……」
「現在の子供は、亜利沙の失踪を知らない筈なのに、妙に詳しかったようだ。それに……」
駿河が独り言を呟き始め、雪谷は視線を逸らした。
「ここでは、まずいですね。奥に移動します」
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