第一章 黒船

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「現場に行ってみるかな……」  まず、現場の公園に行って、どのような状況なのか確認してみたい。 「それもいいけど、夜は止せ。八起まで行方不明になると、黒船の存続ができなくなりそうだ」  俺がいなくても、黒船は継続されるだろう。 「俺がいなかったら、他のバイトを雇えばいい。俺は、ただの学生だよ」  御調に拾われていなかったら、学生にすらなれなかった。  だが、駿河は首を振っていた。 「いいか。御調さんも人を探していた。恋人だった、黒瀬さんと船木さんだ。その二人が行方不明になる前に言った言葉が、やっと見つけた……あの子が最後の一人だ。その最後の一人というのが八起だと、御調さんは言った」  その件は、御調も俺に説明していた。  御調の恋人だった黒瀬と船木は、続発する難病の子供を救うため、発生源と対処法を探していた。その鍵となるのが俺なのだと、御調は説明してくれたように思う。だが、具体的な意味は、全く分からない。  黒船は船木がやっていた居酒屋兼ライブハウスの店を引き継ぎ、名前は黒瀬と船木から取ったという。御調は二人に、探していた人は確保したと知らせる為に、KUROHUNEという建物を建てた。この建物自体に、何かの暗号が秘められているらしい。  そして、御調も連絡が取れなくなった。
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