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「寿村さん、公園で行方不明になった女の子の都市伝説は知っていますか?」
寿村は料理人で、黒船に来る前にも、あちこちで働いていた。料理の腕は確かなのだが、素行が悪いのでクビになってしまったと、寿村は自分で言っている。
「……何となく、聞いた事があるかな。かなり昔だけど……」
寿村が知っている内容は、姉を追いかけて公園に行った少女が、悪い大人に連れ去れたというもので、それが交通標識の手を繋ぐ少女と男になったというものだった。
「……あの標識は、歩行者専用という意味ではなかったのか…………」
「標識的にはそれでいい」
駿河は、すかさずツッコミを入れ、賄い料理を食べていた。寿村の料理は、賄いでもかなり美味しい。
「まあ、都市伝説だからな。手を繋いでいるのは逃がさない為とか、尾ひれがついていたかな……」
「標識にも、都市伝説は多いですからね…………」
標識に、そんな恐ろしい都市伝説があったとは、俺は田舎に住んでいたので知らなかった。
「結構、有名な都市伝説だから、知っている人も多いと思うよ」
「……聞いてみます」
そもそも、俺が住んでいた田舎には、公園が無かった。人口が少なかったせいもあるが、山や川が公園の代わりだったような気もする。
「……他にもあったかな……」
寿村は、他の都市伝説も思い出そうと、目を閉じて唸っていた。
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