第二章 黒船 二

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 公園のトイレで、二人の学生が行方不明になった。二人は、自転車で日本を回っていて、その公園で野宿をしようとしていたらしい。公園にはテントと自転車があり、コーヒーを飲もうとしたのか、カップとバーナーのようなものが出ていた。 「テントの付近には、荒らされた様子は無かった。トイレにも、何の痕跡も無かった」  二人は、携帯電話で動画を配信し続けていて、公園でテントを張る様子、缶詰を温める様子などが写っていた。そして、トイレ付近にある水道で、水を調達しようとしていた。だが水道が壊れていたので、トイレで水を調達しようとした。 「この時を境に、家族は息子と連絡が取れなくなったと言っている」  行方不明になった学生の一人、上条の母親は、息子の動画で無事を確認する事が日課になっていた。そして、その時、息子のテントのはるか後方に、小さな女の子が泣いている姿を見つけた。時間を確認すると夜になっていて、幼い子供が歩いていい時間ではない。  上条の母親は、女の子の存在を教えようと、息子に電話を掛けた。しかし、電波の届かない場所にいるというアナウンスが続くばかりで、電話を掛ける事が出来なかった。  それは朝になっても続き、胸騒ぎがした母親は、動画にあった公園の看板で所在地を調べ、車で現地にやってきた。そして、誰もいないテントと、置き去りになった自転車を見つけた。  母親は事件性を訴えたが、物的な証拠が何もなく、ただの失踪として処理された。 「物的証拠は何も無かったけれど、動画には続きがあった」 「続きは何ですか?」  寿村も続きを知りたがったのだが、関口は中々教えてくれなかったらしい。
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