第二章 黒船 二

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 寿村はマイペースで話しを勧め、駿河は即座にツッコミを入れ続けていた。寿村は恋人が多いせいなのか、通常では入手できないような情報を知っている。  寿村は関口を、しっかりと開発し慣れさせると、その後で動画を入手していたようだ。 「それが、これだ!」  上条は動画を撮影していて後ろに下がり過ぎて、道路の縁石で転んだ。上条を避けたバイクが転倒し、怪我は無かったようだが、バイクのボディに大きな傷がついた。そこで、上条とバイクの少年で口論になった。だが、途中で一緒に旅をしている木村が止めに入り、有り金を全部差し出して謝罪した。 「持っていたお金では、修理代を賄えなかった」  少年がどこかに電話を掛けると、黒いワゴン車が走ってきて、二人を乗せて去っていった。 「寿村さん、このワゴン車は捜査したのでしょうか?」  動画の続きには、ちゃんと現在に繋がる情報が写っていたのだ。 「捜査したようだよ。彼等は、合意の上で、ソープ嬢として働いたと言っている」 「嬢?」  上条と木村は、バイクの修理代の為に拉致され、ソープで客の相手をさせられたらしい。 「借金は返したのですか?」 「数か月ほど働き、修理代は返済された。しかし、上条は海外から隠れて来ていた富豪に見初められて、合意の上で付いて行った」  木村もこの頃に消えてしまい、家にも帰っていない。  上条は、事実上は海外に売られてしまったが、愛人として生きている可能性があった。 「人身売買とかのルートがあるのでは?」 「その線で関口君も捜査していた。でも、それだけではないものが……」  この国は安全、安心と思われがちで、子供や若者が自由に遊んでいる。しかし、世界の魔の手は迫っているのだろう。
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