第二章 黒船 二

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「いらっしゃいませ。お二人様ですね、お席にご案内いたします」  黒船は地下にあるので、窓が無い。だが、圧迫した雰囲気がないのは、中央部にライトアップされた木が存在するせいだろう。水槽のように円筒の何に存在するのは、切り取られた森林のようで、苔に覆われた倒木には新しい芽が生えている。更に小さな草花もあり、そこだけ森の中になっていた。  その奥にある壁には、本棚があり、古い革製の本が、天井まで続いていた。レトロな本棚で、スライドする梯子も付いていた。床は木目で、カウンターの奥に並べられた酒が無ければ、図書館という雰囲気もあった。  入ってすぐの壁には、昔の金庫の思い鉄製の扉があり、このミスマッチのような積み重ねで、黒船は奇妙な統一を果たしていた。 「メニューが決まりましたら、お呼びください」  俺が客を案内して戻ろうとすると、ヒソヒソと話す声があちこちから聞こえてきた。何かあったのだろうかと、首を横に振ってみると、女性客が皆、出切り口付近の席を凝視していた。 「鈴鹿さん、有名人でも来店しているのですか?」  料理を運ぼうとしている鈴鹿に声を掛けると、雪谷が寄ってきた。 「凄い美形のお客様が来ている。それで、騒めいているわけだ」  しかも、その客は兄弟で美形のようだ。 「へえ、あっちの席ですね……え???あれえ???兄ちゃん??」 「え?八起ちゃん、兄弟いたっけ?」  兄と呼んでも、血が繋がっているわけではなく、一緒に育ったというだけだ。  俺は席に近寄ると、改めて確認してみた。
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