第二十ニ章 メリーゴーランドは夢見る 二

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「良かった。亜利沙も冥界に行けそうだ」  しかし、何故か俺達と一緒に、観覧車の列に並んでいた。 「観覧車に乗る気だ……」  乗るのは、いいのだが、死者は死を呼んでしまうものなのだ。事故が起きたら困ると思い、周囲を見ていると、心臓を押さえた男性がいた。 「大丈夫ですか?」  俺が男性を支えると。直哉がスタッフを呼んでいた。 「心筋梗塞みたいです」  スタッフは、急いで救急車を手配し、男性を運んで行った。 「これで済む感じがしない……」 「全くですね」  すると前方で、今度は女性が倒れていた。 「貧血みたいだよ……」  ソワソワしながら待っていると、亜利沙が周囲を走り回っていた。そして、祖母が今度はしっかりと追いかけ、亜利沙を見失わない様に頑張っていた。 「亜利沙、楽しそうだな……」 そしてやっと、俺達の番がやってくると、亜利沙は乗らずに手を振っていた。 『ありがとう。八起ちゃん。直哉ちゃん』  俺と直哉が、亜利沙に手を振っていると、他の関係の無い人々が、手を振り返してくれた。 「八起ちゃんと、一緒にいるというのは、これだけの人に認められなくてはいけないという事か」  何を決意しているのか分からないが、直哉が観覧車から地上を見て唸っていた。 「俺の方が、直哉につり合いの取れる人間になれないような…………」
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