第二十ニ章 メリーゴーランドは夢見る 二

10/13
前へ
/279ページ
次へ
 高い場所から見下ろすと、人が小さく見える。いつもは、障害物もあるので、こんなに小さい人を見る事がない。もしも、神のような存在が、天高くいたとすると、こんな点を相手にしないだろう。 「人間は小さい」  だから、人間を愛するのは、人間しか出来ないのだ。 「人間は、豆粒だ!!」  俺が人間を見て唸っていると、直哉が別の事で唸っていた。 「八起ちゃん。二人きりだね」  直哉が寄ってくると、俺にキスしようとした。しかし、下の観覧車の乗客が、直哉を見ようとしていたので、突き飛ばしてしまった。    「八起ちゃん、突き飛ばさないで!」 「見られていた!危なかった……まだ、カメラを構えている」  しかし、衝撃で観覧車が揺れ続けてしまい、俺も転がってしまった。  観覧車がギシシシと音を立てて揺れていて、これはかなり怖い。下を見ると、落ちたら死ぬような高さで、落ちたくはない。  気を取り直して景色を見ると、遠くまで見えていた。特に、ビルの屋根や看板を上から見るのは新鮮な感動で、布団が干してある屋根なども凝視してしまった。 「あんな風に、布団を干すものか?」 「あまり、普通ではないですね」  屋根に拡げた布団に、人が寝転んでいるようにも見えた。 「そろそろ、頂点だ」  頂点だけは、どこからの視線もない。  直哉は静かに揺らさないように寄ってくると、俺を床に座らせて、そっとキスしてきた。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!

294人が本棚に入れています
本棚に追加