第二十ニ章 メリーゴーランドは夢見る 二

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「八起ちゃん、大好き」 『亜利沙も…………』  亜利沙の声が聞こえて、俺は咄嗟に直哉を突き飛ばした。すると、直哉は激突していて、再び、再び観覧車が大きく揺れた。 「八起ちゃん…………」  亜利沙は、俺の横でしゃがんで、一緒に直哉を見ていた。 『もっと、キスしないの?』 「しないよ。出来ない!」  しかし、亜利沙は俺と直哉の子供に生まれたいので、成仏すると説明してきた。 「俺と直哉では、子供ができない」 『公園で迷子になったアリサちゃんは、直哉ちゃんの沢山の子供の一人に生まれ変わり、八起ちゃんと会います。八起ちゃんは、ずっと変わらない姿で、いつも笑っています。直哉ちゃんは、八起ちゃんを子供達と一緒に愛しています』  どういう意味なのか分からないが、直哉に子供がいると聞いて安心した。 『八起ちゃんの子供は、八起ちゃんを独り占めしたくて、八起ちゃんを攫って、一番遠い世界に行こうとしました。でも、直哉ちゃんは………………』  亜利沙の姿が半透明になると、声が小さくなっていた。俺の子供が、何をしようとしたのか聞き取れなかったが、元気であればそれでいい。  亜利沙が手を振っているので、俺も手を振ると、光の雨が降っていた。 「天気雨だ」  快晴なのに、雨が降っている。 「きつねの嫁入り雨か…………」 「八起ちゃん…………いつの時代の人?」  観覧車が地上に到着すると、雨が止み、虹が出ていた。
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