第一章 黒船

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 KUROHUNEは、ショッピングセンターと直結する二階に、小さな美術館と、文化財の銀行を見降ろせる喫茶店があり、一階にはセレクトショップのような店舗が入っていた。そして、三階以上には幾つものオフィスが入っており、エレベーターホールは早朝の今を抜かすと、いつも混雑していた。 「間に合った!」 「……間に合ってない!」  俺は、担いできたサンドイッチの山を、喫茶店金太楼(きんたろう)に入れると、急いでショーケースに並べていった。 「八起ちゃん、シンプルサンド五個」 「はい!」  並べている最中だというのに、馴染みの客は容赦なく注文してゆく。俺は紙袋にシンプルサンドを詰めて渡すと、金を受け取った。 「又、明日来るよ。八起ちゃんに会わないと、朝が始まらないからね」 「毎度、ご贔屓に!ありがとうございます!」   シンプルサンドは、トーストにバターとハム、目玉焼きを挟んだもので、この店の定番商品であった。このサンドを購入して出勤する人も多いので、店は早朝から営業している。 「八起ちゃん、こっちも五個ね!」 「はい!」  このサンドイッチはこの店で作っているわけではなく、駅の反対側の路地にある、手作りパン屋が造っていた。そもそも、この金太楼には厨房が無く、全て、地下からエレベーターで運んでくるか、パン屋から購入してくるものだ。 「八起ちゃん、三個!」 「はい!」  早朝はテーブル席には客を入れず、ショーケースのみで営業し、九時になると金太楼の店員がやってきてチェンジする。 「八起ちゃん!!二個とコーヒー」 「はい!」  コーヒーはポット販売していて、オフィスの従業員が契約しているものだ。 「八起ちゃん、こっちもコーヒー。それと五個」 「はい!」  もはや、シンプルサンドは数量しか言われない。他のサンドイッチもあるのだが、皆の目当てはシンプルサンドなのかもしれない。
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