第一章 黒船

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 俺は捨て子で、三月の雪の日に、臍の緒がついた状態で犬小屋に捨てられていた。その時の犬の名前が八起で、そのまま俺の名前になった。  犬の八起は優しい犬で、寒さで死にそうだった俺を包み、かつ吠えて人間に知らせた。そして俺は助けられ病院に運ばれ、その後、施設に引取られた。そして、犬の八起が老衰で死んだ時に、飼い主だった遠藤夫婦が、里子として引き取ってくれた。  だが二年ほど前、遠藤家が大工であったにも関わらず、俺は獣医師になりたいと告げ、大喧嘩になってしまった。そして、俺は高校の卒業式の後に、無一文に近い状態でこの街に到着した。  入学金も支払えないので、進学を諦めようとしていた時に、俺はこのKUROHUNEのオーナーに拾われて、現在に至る。
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