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「おいー! 興味持てよー。……もういいや、『何盗むのー?』って聞いて」
切り替え早いな、とシズカが呟いたが、サヤカには聞こえていないようである。
「なにぬすむのー」
シズカは抑揚のない声で投げやりに尋ねる。それでもサヤカの顔は嬉しそうにほころんでいく。
「あのね、まるまるくんの心!」
こころ、という単語があたりに響き渡る。シズカのシャープペンシルの動きが止まった。
「……へえ」
「なにそのびみょーな間は」
サヤカが首をかしげると、シズカはシャープペンシルを置いた。くるくると転がり、問題集ののどで止まる。
「まるまるくんって、丸山一丸のことで合ってる?」
「うん」
サヤカは慎重にうなずく。
「あんた、丸山くんのこと好きだったの?」
「うんっ!」
元気よくサヤカが答える。
「そうなんだ。私も好き」
先程までと同じ低い調子で言うと、シズカは再びシャープペンシルを手に取った。カチカチと頭を押して芯を出す。出しすぎたようで、問題集に当てた瞬間に根本から折れてしまった。
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