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「へー、おそろいだね。……ん? えーっ!?」
サヤカの左足が椅子から落ちた。バランスを崩したサヤカは、背もたれに必死でつかまるが、椅子ごと横に倒れていく。シズカが右手で椅子を押さえる。サヤカの左足が床に着いて、なんとか踏みとどまる。
「ノリツッコミおつかれー」
シズカがひらりと左手を振った。
「私はノリツッコミしたわけじゃない。てか、えーっ!? ウソー!」
サヤカは両手で頭を押さえ、宙を見つめている。
「うるさい。勉強の邪魔」
淡々と答えるシズカのシャープペンシルは、1か所から全く動いていない。
「いやいやいやいや、これがどうして黙っていられようか、かっこ、いや、黙っていられない、かっことじ」
サヤカが頭を左右に振った。
「反語! かっこまで読むな」
シズカは諦めたように問題集を閉じた。
二人きりの教室に沈黙が降りる。シズカが左腕で頬杖をついて、窓の外を眺めた。サヤカは頭を抱えたままうなだれている。
先ほどまで聞こえなかった音が、教室に入り込んでくる。
隣の教室の笑い声、注意する教師の声、どこかの扉が閉まる音、カラスの鳴き声、廊下を通り過ぎる足音。
二人とも動かない。秒針と共に時は流れていく。
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