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「落ち着いた?」
5分ほど経ってようやく顔を上げたサヤカに、シズカが声をかける。
「うん。完全に立ち直った」
「嫌な予感がするな」
満面の笑みを浮かべるサヤカ。椅子を180度回転させ、シズカと対面する形で座りなおした。シズカは眉間にしわを寄せてサヤカを一瞥する。
「『どうやって盗むのー』って聞いて」
サヤカがシズカに笑顔を向ける。
「勝手に喋れよ」
私の気持ちは無視かよ、とシズカが呟いたが、サヤカには聞こえていないようである。
「雰囲気出ないじゃん。いいから聞いて」
「どうやってぬすむのー?」
シズカは完全に投げやりで、口だけを動かして発音するが、サヤカは満足した様子で、腰に両手を当てる。
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました」
「とんだ茶番だな」
シズカがサヤカから目を背けた。
「邪魔しないでよ、いいとこなんだから」
サヤカは唇をとがらせる。
「あっ、そう。じゃあ黙っとくね」
シズカは再び数学の問題集を開き、シャープペンシルの芯を出した。サヤカがおもむろに立ち上がる。サヤカはその場でくるりとターンを決めると、歩きながら身振り手振りを加えながら話し始めた。
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