2

1/4
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

2

「落ち着いた?」  5分ほど経ってようやく顔を上げたサヤカに、シズカが声をかける。 「うん。完全に立ち直った」 「嫌な予感がするな」  満面の笑みを浮かべるサヤカ。椅子を180度回転させ、シズカと対面する形で座りなおした。シズカは眉間にしわを寄せてサヤカを一瞥する。 「『どうやって盗むのー』って聞いて」  サヤカがシズカに笑顔を向ける。 「勝手に喋れよ」  私の気持ちは無視かよ、とシズカが呟いたが、サヤカには聞こえていないようである。 「雰囲気出ないじゃん。いいから聞いて」 「どうやってぬすむのー?」  シズカは完全に投げやりで、口だけを動かして発音するが、サヤカは満足した様子で、腰に両手を当てる。 「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました」 「とんだ茶番だな」  シズカがサヤカから目を背けた。 「邪魔しないでよ、いいとこなんだから」  サヤカは唇をとがらせる。 「あっ、そう。じゃあ黙っとくね」  シズカは再び数学の問題集を開き、シャープペンシルの芯を出した。サヤカがおもむろに立ち上がる。サヤカはその場でくるりとターンを決めると、歩きながら身振り手振りを加えながら話し始めた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!