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 ファミリーレストランでモーニングコーヒーを飲みつつ、めぐみと連絡先を交換した彩里は、地元に帰ってからオンライン通話ソフトをダウンロードし、二千円程度のヘッドセットを購入した。そして休前日ごとに、明け方近くまでめぐみと文字チャットや通話を楽しんだ。  当初は知り合うきっかけになった小説のファントークが主だったが、目新しいトピックに事欠く時は、最近読んだ本や観た映画、身近に起こった出来事やちょっとした相談事など、雑多な話題を互いに持ち込むようになった。めぐみとの会話のテンポは他の誰とも再現できず、またどんな話題でも退屈したり不快になったりするようなことがなかったので、次第に、めぐみと話したいという気持ちが、萌え語りの欲よりも先行するようになった。 「めぐみさん、この間勧めていただいた小説、読みました。すごく面白かったです」 「そっか、よかった! 彩里ちゃんは、もしかしたら苦手かも、と思ったんだけど」 「……半分、ご明察、です。確かに、好きそうって言われたキャラ、すごくツボったんですけど、とても好きなんですけど、……ええっと」 「殴りたい」 「ああ、それだ! いや暴力を振るいたいわけじゃないんですけど、一回説教してやりたい、です。なんなんですか、あのラストのアレは!」 「あのねー、あの子はねー。無条件で、好き、とか、ぺろぺろしたい、みたいな、そういう感じじゃなくって、なんかもう本当……ね。愛憎入り混じる感じ。沼っていうのはこういう時に使う言葉なのかな、って、思ったから彩里ちゃんも道連れにできて嬉しい」 「わたしは、まだ沼落ちはしてませんけどね」 「あれ、そう?」 「ただ、ああいう意味深な言動をされると、つい空白を埋めようと伏線を探してしまうサガで」 「よし、見つかったらそれをまんがに描こう!」 「そういう作戦ですか……」
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