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(めぐみさん……。いつも優しくて、話も楽しいし、いろんなことを知ってるし、ふつうに尊敬できて、好きだな。こんなおねえさんがいたら、ううん、クラスメイトにめぐみさんみたいなひとがいたら、どんなに楽しかったか……)  キャラクターに抱く愛情とは違う。燦然と輝く星に、身を灼くような憧れを抱くのではなく、同じ地平で、同じ気持ちで、同じ星を見上げるひとがいる、その存在こそ、唯一彩里の孤独を慰めうるものではないだろうか。 (どれだけしゃべっても、もう充分、とは思えない。もっと、もっとと、欲しくなるばかり。……ずっと一緒にいられたらいいのに。時間なんて気にせず、顔を見て、話していられたら)  ファミリーレストランで朝まで過ごした日のことを、ひとりでいる時、何度も思い返した。  大学在学中、彩里はめぐみにまんがの描き方を教わり、新しくふたりでハマったジャンルのアンソロジーに寄稿したり、乗せられて個人誌を出したりしつつ、即売会にサークル参加するため、三度ほど上京した。また、彩里の地元の地方都市に観光しに来ためぐみを迎えたこともあった。どの時も、最初に会った時に劣らない充実した時間を過ごしたが、しかしそれは一瞬の夢、楽しい時間は、いつもあっという間に終わる。
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