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「伝わっているんです……一緒にしゃべっている時は。こんなに仲のいい友達同士になんて、そうはなれない、って誇らしいけど、少し時間が経ったら……熱いものが冷めるみたいに、実感がなくなってしまう。だって誰にだって友達って言葉は使えるし、実際、誰とだってそれなりに楽しいでしょう? わたしだけ特別な友達、だなんて、どうやって、信じたら。そう思うと、不安で、でも……すみません。失礼なこと、言いました」  ちゃんと謝罪できているだろうか。見苦しい言い訳をして、と思われないだろうか。これだけ食い下がる執着こそ重い、と引かれないだろうか。震えそうになるが、めぐみの反応を確かめずにはいられずに、何度もそらしてしまいながら顔を見続けていると、再び視線がかち合う。  めぐみは肩を竦めて、笑った。 「まったく。失礼だって、わかってくれたんならいい。いいけど、あんまりさびしいことを言うと、私だって傷つくんだからね」 「すみませ……」 「謝らなくたって大丈夫。ほら、彩里ちゃん、新幹線の時間」 「でも、めぐみさん」 「大丈夫(・・・)!」  どうして彼女は、これほど根拠のない言葉を、自信満々に、さも公平そうに紡げるのだろう。  彩里にはわからない。ただ、信じられたらいい、とは思う。信じたい、の方が近いのかもしれない。なんの証しだてもないけれど、めぐみの言ったことだから、と理にかなわない理論で押し通して。――どうせ心底百パーセントは信じられやしないのだ。 「近いうちに、通話しよう。時間をつくって。こわがらなくたって大丈夫。大丈夫って思わせてあげる。いい? そんな不安な顔をしなくていい。こんなことで、私はあなたを嫌ったりしないし、気まずくもならない。また絶対に、楽しい時間を過ごせるから。それだけ、信じて」  最終の新幹線の発車時刻が迫ってきていた。エスカレーターから一番遠い自由席の乗車口まで、走らなくては間に合わないかもしれない。めぐみが彩里の背中を、改札に向かって押し出す。彩里は自動改札に切符をくぐらせ、出てきた切符を受け取ったところで振り返った。そして、なんの確信もないまま、頷く。めぐみは満足したように親指を立てた。 「えらいぞ彩里ちゃん。じゃあ、また!」 「またね……。めぐみさん、」  彩里はなにか言おうとしたが、思い浮かばず、ぺこりと頭を下げてから、新幹線のホームに向かってわき目もふらずに走った。
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