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「そこはヨルノ先生の手で、続きを書いていただいてもいいんですよ。次の新刊で」
「書けるか!」
めぐみがこれほど酔うのは珍しいことだ、と思いながら、熱に浮かされたような早口でしゃべる彼女を見ていると、向かいに座っていた仲間が茶々を入れてくる。
「おっと。そこのごふーふ、なかなか見せつけてくれますな~」
「あー、ご結婚されてるんでしたっけ。ヨルノさんとヒダリさんって」
「あ、はい……」
「へえ~。リアルゆりっぷる、知り合いで初めて見ました」
彩里は一瞬訂正しようかと迷ったが、酔っている上なにも考えずに口走った感じの仲間の顔に、なにかを言う気力を削がれ、結局、黙った。使っている辞書の違いに、彩里はこのところ、すれた諦念しか持つことができない。別の仲間が、彩里の表情の翳りには気付かず、溜息をついた。
「いいなぁー、オタ友との結婚って、ある意味夢ですよね。うちもオタ婚はオタ婚なんですけど、旦那と趣味が合わなくて、萌え語りはできないから、羨ましい」
「そうなんですか……?」
羨ましがられても、やはり戸惑うばかりだ。こういう話題には、どう返したら角が立たないのだろう。戸惑う彩里の横で、めぐみが引き取った。
「趣味が近い分、離婚の原因が、うっかり逆カプにはまった、とかにならないよう、気を付けますよ」
どっ、と笑いが起こった後、一座の話題はたちまち、最近SNSであったマナー論争や、ジャンル内学級会といったゴシップ話に移っていった。
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