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――ああ、かっこいいなあ、かっこいい未来だなあ。
わたしは、未来の妄想を止めて、ベッドに起き上がる。
生化学者はかっこいい。バリバリでかっこいい。どっちかっていうと理系なわたしは、行ければそっち系かなと漠然と思っている。
少壮の科学者、大学史上最年少の准教授就任、みたいな。
でもそれは、予言者の幻視ではなく、単なる妄想なのだ。
わたしは、どうやらそこまで賢くはない。一時、勘違いをしかかったこともあったけれど、塾に通いだしてからは「井の中の蛙」と知った。
それに、わたしは今、バリバリと突き進んではいても、吸い付けられるような、人生を賭けたくなるような、テーマや目標、意味を見つけられたわけでもない。
もやもや。
36歳、妄想の中での准教授のわたしは、過去を振り返って、「もやもや」はいつしか晴れたことにしてしまったけれど。
そんなうまい具合にいくかどうかなんて分からない。むしろ、結局もやもやは晴れず、これまでの猪突型モチベーションは息切れし、それでも何だか、カラカラと車を回し続けているネズミみたいにとりあえず惰性で走ってはいて……、みたいには、なりたくはないなあ。
それでまた、スマホを眺めながら、ベッドに寝転ぶ。
今度は過去に潜ろう……。
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